第2年次にあたる本年度は、位置天文学的な手法で重力レンズ研究を行うモデルケースとして、PKS1830-211など3つの重力レンズQSOを、日本国内の大学連携VLBIネットワークを用いて観測した。この観測の目的は、これらの重力レンズ天体における複数像間の位置関係を精密に計測し、過去の結果と比較することでその位置変動を調べるものである。QSOから放出されるジェットでは、見かけ上光速度を超える運動が電波で観測されており、これらのQSOの電波ジェットでもこのような動きが期待できる。重力レンズを受けた電波ジェットが天球上を動く際に発生する像の位置変化が計測されれば、重力レンズモデルに新たな制限をつけることが可能になる。この観測は現在解析中であり、その詳しい結果は来年度以降に得られる予定である。 一方、VERAで観測したメーザー源における位置天文重力マイクロレンズの探査も行っており、今年度は銀河系内の星形成領域OH43.8-0.1について、水メーザー源の内部固有運動の解析を行った。残念ながらマイクロレンズによると思われる有意な位置変動はこれまでのところ観測されていない。一方、OH43.8-0.1の水メーザースポットの運動については初めて詳細なマップを得ることができたので、これを2005年度の日本天文学会欧文報告に論文として出版している。
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