研究概要 |
本年度は、(K^-,K^+)スペクトロメータの概念設計を行うとともに、ドリフトチェンバーのプロトタイプ設計および製作を行った。(K^-,K^+)スペクトロメータは、研究計画策定時において候補としていた既存磁石(現在アメリカジェファーソン研究所において利用中)の流用は、そのスペクトロメータが、当初予定よりも長期に現地で用いられることが確定したため候補から外し、全ての磁石を新設するという方針に確定した。スペクトロメータ系は、四重極-四重極-二重極(QQD)の3磁石から構成することとした。これは、四重極を二台使うことで、縦方向と横方向独立に収束条件を変えることができるという自由度が得られるという利点による。また、最初の四重極磁石を、通常の形状ではなく、下流に行くにしたがってボア半径を大きくしていくという形状を持たせることにより、目標性能50msrに対して、100msrという、超伝導磁石でしか得られることのできないと思われていた立体角が得られる可能性があることを示すことができた。一方、運動量分解能に関しては、100msrという大立体角に対しても、当初目的の分解能を達成することが確認できた。一方、ビームラインドリフトチェンバーに関しては、小型のプロトタイプを作り、プリアンプ、読み出し系を含めた総合的なテストを行い、動作確認を行った。確認に際しては2種類の異なる積分時定数を持つプリアンプを用いて、両者の性能比較を行った。時定数が短いほうが高計数率に強いシステムとなるが、一方で得られる電荷量は減り、分解能の劣化を招くので、どちらが有利かを比較検討する必要があり、現在その比較が進行中である。
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