新世代チェレンコフ望遠鏡主鏡の素材候補として、軽量・安価な金属(アルミ)を選び、実現に向けた技術開発を進めた。口径10〜30メートルの大型望遠鏡複数台を想定するなら、野外にカバーなしで5年程度の耐候性が求められる。表面の耐候性を検討すると共に、大曲率半径の鏡を試作して結像性能と加工手法を調べた。稼動中のチェレンコフ望遠鏡(CANGAROO)を用いて望遠鏡全体の反射率の測定方法も確立した。 1.(1)耐候性を調べるために2種類の表面コーティングを試し、CANGAROO観測所に設置して経時変化をモニターした。観測条件から400nm程の短波長反射率が重要になる。最初の2ヶ月で汚れのために全波長域で1割下がったが、さらに8ヶ月後もこの反射率はほぼ維持されており、良好な結果だった。 (2)モニター表面に付着したチリ成分の分析から観測所の大気環境を調べた。チリには結晶構造が見られ、Mg、Naが検出された。近傍の塩湖の影響か、大気中に塩分が含まれていることが分かり、耐候性議論の材料となった。 (3)観測地は砂漠で一日の温度差が30度になることもある。素材の急速な膨張収縮繰り返しでコーティング剥がれが生じる可能性を検証するため、現地温度差に即した環境試験を行った。温度上下100サイクルの結果、影響は見られなかった。 2.チェレンコフ望遠鏡の焦点距離はF〜1と長いため、鏡の曲率加工は難しい。最も安価な削り方法で直径150ミリ、曲率半径17メートルの球面鏡を試作した。照射試験では中心の結像は仕様を満たしたが、削り構造が残って集光率は若干不十分だった。鏡面の3次元計測結果が解析中であり、それを基に加工法の開発を行っていく。 3.CANGAROO望遠鏡を使って、望遠鏡光学性能(反射率、結像)モニターの装置開発を行った。短波長に重点を置き、効率の良いCCD、スクリーンを導入した。最終測定は今年度末に予定されている。
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