有限温度密度のQCDの相図(クォーク質量有限)に期待される臨界点に関して、平均場理論に基づいて、付随するソフトモードがバリオン数密度揺らぎに深く関連するものであることが明らかになっている。ここでは、それを平均場を越える議論に拡張するために、動的繰り込み群の方法を用いた解析を検討中である。 一方、超高エネルギーでの核子-原子核衝突における粒子生成について、カラー凝縮の古典場模型に基づいて原子核の非摂動的グルオン分布関数に類似するものを数値的に初めて計算した。シングルクォーク生成率に関しては、従来、横運動量kTについて足し上げを行うkT因子化の近似が広く用いられている。しかし、生成するクォークが原子核内で多重散乱を受けることによるkT因子化の破れることも知られている。ここでは古典場模型で得られた原子核の非摂動的な構造因子を用いて、kT因子化の破れの大きさを初めて数値的に評価した。その結果、質量1.5GeV程度のチャームクォークの生成断面積に対しては、破れの大きさは15%程度で比較的小さいことがわかった。また、グルオン密度の飽和スケールやクォーク質量に対する依存性も明らかにした。
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