平成18年度はじめには、平成17年度に設置されたHERMES反跳粒子検出器によるデーター収集が開始された。データー収集は年度を通じて行なわれた。 年度前半は検出器コミッショニングを目的とし、データー収集システムとの統合、検出器の運転状況監視システムの完成、収集された測定データーの補正手法の構築等が積極的にすすめられた。中旬にはハードウェアのトラブル等も発生したが、問題点の改善・改良により後半は非常に安定に測定がすすめられた。 後半はモンテカルロによる検出器シミュレーションと、収集されたデーターを元に、粒子飛跡の再構築法の開発をすすめた。反跳粒子検出器は電子深非弾性散乱により標的から反跳をうけて放出される標的陽子の飛跡検出を目的とするものである。再構築された飛跡は、電子陽子弾性散乱事象により系統的に調べられ、飛跡構築効率・精度等を導出した。 反跳粒子検出器のコミッショニングと平行し、これまでに収集されている測定データーに基づく物理解析もすすめた。2005年に収集された深仮想コンプトン散乱事象のデーターは、この検出器による一般化されたパートン分布関数の測定と密接な関係をもつ。横偏極陽子標的による標的スピン非対称度の導出を行なった。それに基づき核子内部でのu、dクォークの全軌道角運動量が得られている。
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