本課題では、主に次の2点について研究を行なった。 1)試作器によるシミュレーションパラメータ測定 以前に行なったテストカウンタのビームテストに引き続き、別の輻射体・MCP光電子増倍管を用いた試作器を製作しビームテストを行なった。正面から入射する荷電粒子に対する信号出力の時間応答やその角度依存性などのデータを取り、シミュレーションに反映させるパラメータの測定を行なった。 2)測定器に搭載可能なデザインでの最適化 一連のビームテストにおけるデータを元にシミュレーションの開発を行い、それを用いて衝突型加速器実験のBelle測定器に搭載可能なデザインの最適化を行なった。現実的なコストで有効範囲を広く取るには、輻射体である石英をタイル状に並べ、その片側面に光を検出する光電子増倍管(PMT)をつける形状がほぼ唯一の方法であるが、円錐状に輻射するチェレンコフ光の性質を利用することで個々のカウンタの形状を最適化することができる。測定器内の粒子の発生点が衝突点であるため一定とできることからTOFに対する入射位置と角度に決まった相関がある。このことを利用して、どのタイルに対しても最低限20psの時間分解能が達成できるデザインをシミュレーションによって構築した。デザインした形状は、衝突点に一番近いタイルの長さを短く、離れるにつれてしだいに長くするようにした。一番近いタイルでは入射角度が90度に近く、PMTに到達する光の波面の密度が小さいため、広がる前に光を検出する必要があるため、短くする。一方、入射角度が小さくなると、チェレンコフ光の発生方向がPMTの検出面に向くため、光の波面の密度が大きく、長い伝播距離でも良い時間分解能が得られることが分かった。今後さらに、開発したシミュレーションを利用して最適化を進める。
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