研究概要 |
本年度は日本原子力研究所FNSにおける大強度中性子ビームラインにおけるビームタイムを2回(4週間)に渡って得ることができたため、当初来年度を想定していた大強度中性子場における検出器の特性試験について、一部の研究を前倒しで行うことができた。本年度行った研究は、主に以下の2つのテーマに大別される。 1.CF4ベースのガスを用いた大強度中性子場における検出器の信号強度及び放電確率の測定 これまで高エネルギー実験に用いられてきた大型のMWPCにおいては、CO2をベースとしてイソブタンやペンタンなどのクエンチャーガスを添加しているものが多かったが、中性子が添加ガスの水素原子を反跳させることにより生じる数MeV単位の局在化したエネルギーデポジットが引き起こす放電が問題になっていた。この大きなエネルギーデポジットと放電を抑制する効果の見込まれるCF4ガスをベースガスとして用い、FNSの中性子ビーム(単色14MeV,10^6n/cm^2/s)照射下における検出器の出力信号、及び放電レートを測定した。この結果、同様な動作条件においてCO2ベースとCF4ベースでは中性子に起因する出力信号の大きさが数十%抑えられ、さらに放電確率については、CF4によるものが10^2以上抑制されることがわかった。一方で神戸大学において宇宙線による検出器の検査設備を用いてμ粒子の通過に伴う信号(MIPによる信号)を測定したところ、これらの2つのガスによる信号の大きさに大差は無かった。以上のことから、CF4ベースのガスにおける中性子場での動作特性は、極めて安定したものであることがわかった。 2.大強度中性子場における検出器の劣化試験 原研FNSの中性子ビームラインを用い、単色14MeV、2.5×10^12n/cm^2の中性子を、検出器に照射し、特性の変化を調べた。なお今年度行った劣化試験では、CO2ベースのガスのみを用いている。結果はまだ解析中であるが、通常実験で用いる検出器の動作条件において、2×10^12n/cm^2の照射量を超えたあたりで信号の低下が見られている。この結果は、来年度に行う予定のCF4ベースガスによる劣化試験と合わせて評価する必要がある。
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