研究概要 |
申請者が中性子過剰核16Cで発見した四重極換算遷移確率の異常抑制の原因解明に向けて、平成16年度は16Cの隣の偶偶核18Cの換算遷移確率を測定した。換算遷移確率は、第一励起状態の寿命の逆数に相当する。 理化学研究所の不安定核ビームラインを用い、核子当たり80MeVの18Cビームを安定核ビーム22Neから生成した。得られた18Cビームを2mmのベリリウム板に照射し、非弾性散乱を利用して励起させた。励起状態から脱励起する時に放出されるガンマ線を13層160個のNaI(Tl)検出器で測定した。NaI(Tl)検出器群の内側に、標的を囲むよう鉛障壁を設置する。このセットアップにより、脱励起ガンマ線の鉛内部でのNaI(Tl)検出器への経路が、放出位置の関数として変化する。ガンマ線の強度は鉛中での経路に応じて指数関数的に減少するので、各層の検出効率は放出位置の関数として書き表せる。例えば寿命が100psとすると、脱励起するまでに原子核は平均で1.2cmというマクロに移動するので、NaI(Tl)検出器各層で検出したガンマ線強度から寿命を求めることができる。 実験に当たって2点セットアップを改善した。NaI(Tl)層が2層から13層にした事と、鉛障壁を可動式にし、寿命を決定する時に大きな不定性の要因だったガンマ線の角度分布を測定できるようにした点である。 18Cの換算遷移確率測定と同時に16Cの換算遷移確率の高精度決定を目的として、改めて励起状態の寿命測定を行った。更に不安定核16,18Cからの2段階破砕反応を利用し17C,15,17Bの励起状態の寿命測定も併せて行った。 また、16Cの結果を6月にスウェーデンで行われた国際会議INPC04でポスター発表を行った。
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