研究概要 |
本年度はおもに測定装置等の設計,開発,改善などを行った. 具体的には,まず光源として光帰還半導体レーザーを開発し,非常に狭い線幅をもつ高安定なレーザー発振を実現した.この光源は非常に安価に製作が可能であるという点が大きな特徴である.なお,線幅の評価には自己遅延ヘテロダイン検波と呼ばれる手法を用いた.これは光源を二分した後に片方の光に1キロメートル程度の遅延を与え,周波数シフトさせた他方の光とのビート(うなり)周波数をスペクトラムアナライザーにて観測するもので,これによると今回開発中のレーザーシステムはわずか約10〜20キロヘルツの線幅しか持たないことが分かった.半導体レーザー自身の線幅が20メガヘルツ程度であることを考慮すると,この手法はレーザーの狭帯域化において非常に効果的であることがわかる.今後はこの光源を既存の超高分解能ブリルアン分光システムに組み込んで量子固体・液体である固体水素・液体水素のブリルアン分光に用いていきたい. つぎに固体水素・液体水素を維持する為の低温容器の改善を行うべく,同容器の仕様・設計を見直した.具体的には固体・液体水素とレーザー光との相互作用距離を長くするためにサンプルセルの形状を見直している.特に固体水素作成時には30〜40気圧の圧力がセル内に印可され,なおかつその圧力が固体完成時まで確実に結晶全体に行き渡るようにする必要があるため,その設計には慎重を要する.現在の所,種々の定数の計算中であり,間もなく製作に入れるものと期待される.
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