研究課題
カーボンナノチューブに対し以下の研究を行った。(i)架橋金属単層ナノチューブに対し強い電子間相互作用が働く場合の電気伝導を理論的に研究した。架橋構造の副次的な効果、いわゆるナノ電気力学系の性質に着目し、ナノチューブ内電子と力学振動との相互作用を取り入れた計算を行った。昨年度までの研究では、ナノチューブ振動として音響フォノンとの相互作用を考え、音響フォノンと電子が相互作用する結果としてフォノン支援トンネリングを反映したピーク構造がコンダクタンスに現れる可能性を指摘した。しかし、架橋構造特有の力学的振動として、横方向の振動(ベンディングフォノン)が誘起される。そこで本年度はベンディングフォノンの影響について詳しく調べた。まずはじめに、ゲート電極中でナノチューブが振動することにより、有効的に電子系とベンディングフォノンとが結合し、ゲート電極の強さにより結合強度を自在に変化できることを示した。次に、電子状態を調べるために数値的に対角化し、電子系が不安定化する閾値電場が存在することを示した。さらに、この系の性質をより詳しく調べるために、有効モデルを解析的に調べ、不安定化が主に最低励起フォノンによることを示した。そして状態密度など実験測定値に対応する物理量を得た。(ii)タイトバインディング模型を用いたラマンスペクトルの数値計算において、金属ナノチューブに対して実験と数値計算の間に共鳴幅に食い違いが生じるという問題があった。この問題に対し、光励起電子と一次元金属電子の相互作用を電子励起-プラズモン相互作用としてモデル化した。この相互作用による共鳴幅を計算し、プラズモン効果による寄与を計算した。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (1件)
Physical Review B 74・16
ページ: 165414-1-6