研究概要 |
シリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)が隙間の多いケージ構造をとり,様々な原子をゲストとして内包する半導体クラスレート化合物は新しい機能性材料として注目されている。本研究は,特に圧力,温度をパラメータとし,ラマン散乱分光を主なプローブとして半導体クラスレートの超伝導発現のメカニズムや構造相転移に関する新しい知見を得るのが目的である。 本年度の成果として,まず1型構造を示すカリウム(K)内包シリコンクラスレートの圧力下での相転移の解明が挙げられる。上記のシリコンクラスレートについて超高圧ラマン散乱実験を行い,構造相転移を発見し,その機構について検討した。その結果,結晶学的に同形であり超伝導を示すBa内包シリコンクラスレートと同じ相転移機構が働いていることを確認した。また,構造I型Ba-Siクラスレートが示す7万気圧と15万気圧での相転移についてさらに詳しい測定を行いその機構について検討を行った。その結果,15万気圧では単位胞の体積が大きく減少するものの,結晶構造自体は不変であることがはじめて明らかになった。 構造III型のBa内包シリコンクラスレートについては,27万気圧までの高圧下ラマン散乱測定を行い,ゲストBaの振動モード,7万気圧における相転移,20万気圧以上でのアモルファス化をはじめて観測し,それらに関して詳しく検討した。 今後,同形のゲルマニウムクラスレートの高圧実験と低温実験を行うことにより,高圧構造安定性と超伝導発現メカニズムに対する知見を得ることが課題である。
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