本年度は、強誘電性半導体混晶であるCdTe-ZnTeのPair distribution function method(PDF法)を用いて構造解析し、研究成果を強誘電体国際会議(IMF)で発表することができた。 また、チタン酸ビスマスの結晶化過程をさらに詳細に検討し、液相を経る結晶化過程では、結晶相でも、液相の影響を受けることをPDFによって突き止めた。この研究結果はJournal of Applied Physicsに掲載予定である。また、このチタン酸ビスマス(BiT)と同様の液相でのローカルな歪みが他の誘電体でも存在するかどうかを確かめるため、La_4Ga_5SiO_<14>(LGS)の放射光X線トポグラフィを行った。その結果、LGSにおいても、BiTと同様の局所歪みによって結晶が歪んでいることがわかった。本研究の最終的な目的は、ドメインコントロールによる物性制御であるが、ドメイン制御以前に結晶育成の段階で大きな問題があることがわかった。ドメインは結晶中のわずかな歪みによってトラップされるため、極力歪みの少ない結晶を用いることが重要である。そこで、液相を経ないような単結晶育成法を検討する必要がでてきた。その一つとして、Solid-State Single Crystal Growth(SSCG)を考えている。この方法は固相における、異常粒成長を用いているため、液相を経ずに単結晶を育成することができるため、液相からの局所歪みから解放されることが期待される。このSSCGにも来年度から取り組む予定である。 本年度の研究を通じて、PDFとX線トポグラフィの併用によって、結晶の高品位化が図れることがわかった。そこで、ドメイン制御と同時に、結晶の高品位化にむけての取り組みも、引き続き行っていきたい。
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