研究概要 |
(1)以下に挙げる技術的課題を16年度中に解決すべく目標を立て、すべてにおいて解決した。 (1) 10マイクロメートル級の矩形型擬似光源によるコヒーレントX線の抽出。 (2)コヒーレントX線の評価と擬似光源の最適化及び光の整形。 (3)自己相関関数(※)測定装置を用いた光の長時間安定度の評価。 (4)各種アタッチメント(冷凍機など)の振動の影響の評価。 その結果、spring-8のBL22XUにおいてX線光子相関分光法によるナノメートルサイズ級分域構造のダイナミクスの研究を行う条件が揃ったので、予備的ではあるが次に示す実験を行った。 (2)ナノスケールドメインのゆらぎが巨大誘電率発生の原因と考えられるリラクサv一物質群のうちのひとつ、Pb(lni2Nbi2)03の電場揺動下(10V/cm、20Hz)における(300)ブラッグ散乱の自己相関関数を測定した。その結果ゼロ電場下と比較して明らかに異なる自己相関関数を見出した。これはおそらく電場揺動による極性ナノスケールドメインの動きを初めて捕えたものと考えている。H17年度はより詳細な実験を行ってゆく予定である。 (3)本手法を適用する試料の探索の一環として、電荷ゆらぎが大きいと考えられる物質NaV205の電荷秩序構造を決定した(Ohwadaetal.,Phys.Rev.Lett.,94(2005)106401)。超長周期(ナノスケール)構造を形成し温度圧力によって複雑に相転移する、いわゆる「悪魔の階段」的相転移を示すNaV205の相転移点近傍における臨界減速(Critical Slowing Down)はいまだ観測されておらず、また広い温度範囲にわたって誘電率の周波数依存性を示す事から、本手法を適用できる有望な物質と見ている。その他、リラクサー物質の基礎研究も引き続き行なわれている(Gehringetal.,PRB70(2004)014110)。(※)本報告書では遅延時間に対する自己相関関数の事をさしている。
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