北陸先端大山田助教(現東京農工大特任助教授)と共同で、シアノ架橋金属錯体ナノ粒子の磁性等の、表面配位子効果について研究を行った。これらの材料は光誘起磁性を示す物であるが、表面を修飾する長鎖アルキル鎖を持つ配位子の種類によって、磁化の大きさが異なることを山田助教が発見した。我々は、この理由が、配位子が結合する遷移金属が6配位高スピン構造から4配位低スピン構造に変化することを密度汎関数法の計算により明らかにした。具体的には、ニッケルにピリジン、エチルアミン、水が配位した場合の安定構造及びスピン状態をそれぞれ計算し、エネルギー比較から構造の安定性を議論した。磁化の変化は、配位子が結合する金属原子の比率が配位子の種類によって変化し、その結果、低スピンになる金属原子の比率が配位子に依存するためであると考えられる。この結果は、現在論文を執筆中である。 また、錯体ナノ粒子を合成する際には、前述の通り、長鎖アルキル鎖を持つ配位子を使用するが、表面に長鎖アルキル鎖を持つ配位子が多数配位した場合に、その構造は明らかではない。我々は特に、金表面中にテルル末端配位子が吸着した際の構造について、半経験的分子軌道法により計算した。結果として、テルル末端配位子を利用した場合、配位子が高分子化し、硫黄末端配位子の場合と構造が大きく異なることを示した。この結果は、産総研中村徹主任研究員が実施した実験結果と一致する。
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