超伝導を示す遍歴電子強磁性体であるUGe_2は強磁性相の中に別の強磁性を持つ特異な温度-圧力磁気相図を持っている。超伝導はこの2つの強磁性の相境界近傍で発現する。過去の我々の研究から、この相境界で伝導電子の有効質量の増大など異常が観測されている。このような特異な強磁性および、相境界の異常が超伝導の発現にどのようにかかわっているかはきわめて興味深い。一方、同じく遍歴強磁性体のZrZn_2でも超伝導が報告されており、我々のドハース・ファンアルフェン効果の圧力実験からZrZn_2でもUGe_2と相似の磁気相図を持つことが明らかとなった。そこで、ZrZn_2の場合でも、相境界近傍で有効質量の増大などの異常が観測されるかどうかを確認した。結果は、UGe_2で観測された明確な異常は観測されなかった。この結果から考えられるシナリオは、(1)UGe_2とZrZn_2の超伝導の発現メカニズムは異なる。(2)UGe_2で見出された相境界の異常は超伝導とは関係ない。(3)ZrZn_2の超伝導は本質的な現象ではなく、不純物によるものである。(1)と(2)は可能性として否定はできないが、磁性の特異性と有効質量の増大の原因が特定されていない現段階では考えにくいシナリオである。(3)は実際に超伝導の再現性が乏しいことが指摘されていることから、最も可能性が高いと思われる。そこで我々は、ZrZn_2の超伝導を再現する条件を探し、放電加工した試料のみが超伝導を示すことを明らかにした。また、超伝導を示した試料を電解研磨すると超伝導を示さなくなることがわかった。このことはZrZn_2の超伝導はバルクではなく、表面によるものであることを示す。来年度は、超伝導を引き起こす原因が、表面に形成された不純物によるものか、歪によるものかを明らかにするために、軸性圧力下における輸送現象の測定を行う予定である。
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