絶対零度において、圧力や磁場などを変化させることによって引き起こされる相転移を量子相転移という。量子相転移が起きる臨界点(量子臨界点)付近における物質中の電子の振る舞いは従来知られている描像とは異なり、エキゾチックな性質を示すことが近年明らかになってきた。なかでも、いくつかの遍歴電子強磁性体や重い電子系では量子臨界点近傍で超伝導が見出されていて、よく知られたフォノンではなく、「磁気的な揺らぎ」を媒介とした超伝導が実現していると考えられている。このようなunconventional(新奇な)超伝導のメカニズムを解明するため、特に遍歴強磁性体の量子臨界と超伝導の共通点を探るのが本研究の目的である。本研究により明らかになったのは以下のとおりである。 (1)UGe_2とZrAn_2は共通した特異な磁気相図を有する。 (2)ZrZn_2のストーナー因子は2つの強磁性相で変化しない。 (3)ZrZn_2の超伝導は表面敏感であり、加工によって生じた不純物あるいは歪によって引き起こされている可能性が高い。 (4)UGe_2は2つ強磁性相のうち弱い分極相で伝導電子の大きな有効質量の増大が起きるが、 ZrZn_2では有効質量の変化はほとんどない。 また、本研究で推進した極低温における圧力下輸送特性の実験技術により、結晶構造に空間反転対称性を有しない重い電子系反強磁性体であるCeRhSi_3が圧力下で超伝導になることを発見した。
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