超伝導状態、特に対形成相互作用を制御する手段としての、ドープされた非磁性不純物の超伝導への影響を研究した。銅酸化物超伝導に対し、スピン揺らぎが引力起源である場合について、非磁性不純物散乱によるスピン揺らぎのスペクトルの制御を調べ、それによる超伝導状態への影響の研究を実施した。また、超伝導状態に対する不純物効果として、元素置換効果による不純物散乱効果、多バンドでの不純物効果も併せて理論的に研究した。前者は有機超伝導体λ-(BETS)_2Fe_xGa_<1-x>Cl_4を対象物質とし、元素置換にともなう磁性状態(絶縁体状態)から超伝導状態への変化の相図を不純物散乱の効果を用いて理論的に説明した。後者はMgB_2を対象物質とみなし、散乱によるバンド間遷移の影響についてボルン近似を越えた理論により明らかにした。また、2004年に入り、クーパー対形成の相互作用を制御する新たな手法が実現し、弱結合から強結合までを自在に研究できる物質系(極低温フェルミ原子ガス)が現れた。これは本研究課題が目指す相互作用制御にも大いに関係するため、この新手法を参考にすべく、フェッシュバッハ共鳴による相互作用制御の機構の理論的解明を行った。相互作用制御の過程でのBCS状態から強結合BEC状態への移行現象、そこでの励起スペクトルの変化、集団励起を解明、更に、別種のフェッシュバッハ共鳴による異方的超流動実現とそこでの相互作用制御の可能性を研究した。この物質系では、不純物ではなく磁場により引力相互作用の精密な制御が可能となっており、こうした方法(あるいはこれに類似した方法)が銅酸化物超伝導をはじめとする非フォノン超伝導でも実現できないかの検討を実施した。
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