スピンダイマー系における磁場誘起磁気秩序の研究を行った。 平成16年度では、具体的に、以下の成果を得た。 (1)磁場誘起磁気秩序に伴う磁気ひずみの理論 スピンダイマー系物質TlCuCl3とNH4CuCl3では、磁場誘起磁気秩序に伴う磁気ひずみが超音波測定で観測されている。これによると、弾性定数は非秩序相では変化しないが、磁気転移点において不連続にとび、秩序相では磁場に比例して変化することが報告されている。これらの点を解明するため、スピン系と格子系が結合した系のギンツブルクーランダウ自由エネルギーを構成し、磁気ひずみについて調べた。その結果、実験で観測されている結果は自然に説明でき、さらに、転移点での弾性定数のとびと他の熱力学的量の間には、エーレンフェストの関係式に相当する関係式が成り立つことを発見した。この結果に関して、いくつかの実験グループが関心をもっており、関係式が成り立つかどうかを調べる実験が計画されている。 (2)スピンダイマー系の磁気励起を媒介にした超伝導の理論 スクッテルダイトと呼ばれる結晶構造を持つ重い電子系超伝導物質が近年発見されている。この系では、スピンダイマー系の磁気励起とよく似た、結晶場励起子が存在することが中性子散乱の実験で明らかにされている。この励起子を媒介にして超伝導が発現する可能性があることを、理論的な立場から明らかにした。
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