研究概要 |
平成16年度は大型放射光施設SPring-8のビームラインBL39XUにてPt L_<2,3>吸収端での圧力下磁気円二色性測定を2回行った.これらの実験から,インバー効果を示すFe_3Pt合金と大きな磁気異方性をもつ規則相FePtのPt強磁性を研究した. Fe_3Pt合金では,3.5Gpd以上で可逆的に強磁性が消失することを観察し,二次の磁気転移であることを示した.この結果はOdinらによって行われたXMCD測定とは異なる結果であるが,メスバウアー分光の結果とはよい一致を示す.さらに,磁気光学聡和則によって求めたPtのスピン磁気モーメント(m_<spin>)と軌道磁気モーメント(m_<orb.>),およびその比率(m_<orb.>/m_<spin>)の圧力変化として,強磁性が消失するまでにそれらの大きさが急激に減少することが分かった.一方,規則構造のでFePtは,30GPaまでの加圧において強磁性相を維持していた.FePtのm_<spin>とm_<orb.>は圧力によって僅かに減少するが,比率m_<orb.>/m_<spin>においては,ほとんど圧力変化を示さず,その強磁性の圧力変化はFe_3Ptの結果と本きく異なっていた.これらの圧力変化の違いは,Ptの大きなスピン軌道相互作用と,Fe3dとPt5d電子間の混成状態が,2つの強磁性合金で異なることに起因すると考えられる.なぜなら,これらの因子は結晶構造や,圧縮率に強く依存するからである. 平成16年度では多重極限環境下(高磁場・高圧)でのXMCD測定を実現するため,英国ダイヤセル社製の10T超伝導マグネット用高圧セルを購入した.今後,この高圧セルを用いてFePtの保磁力の精密測定と,その圧力変化を行い,磁気異方性と結晶構造,およびPt磁性との相関を研究していく予定である.また多重極限環境下でのXMCD測定の実験例として,2004年夏に仏国グルノーブルで行われたSRMS-4においてDyCo_2での研究結果を発表した.
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