研究概要 |
平成17年度は,大型放射光施設SPring-8での共同利用実験を2回行い,L1_0型FePt合金のPt磁性を10Tでの高磁場下で,その圧力変化をPt-L_<2,3>吸収端でのXMCD(磁気円二色性)から調べた. 圧力下XMCD実験では昨年度の予算で購入した超伝導マグネット用小型ダイヤモンドアンビルセル(DAC)を用いた.昨年の実験では試料の印可磁場が1.3Tと小さかったために,試料が飽和磁化に至らなかったが,今年度の実験では10Tの磁場によって圧力下でもそれが可能となった.試料の磁化を十分飽和させた結果,20GPaまでの圧力では,FePtの結晶格子のc/a比が0.965から0.97へ上昇し,その体積が93%に減少している反面,Pt磁性を現すXMCD強度はほとんど変化しない結果が得られた.この結果はFePtの強磁性が極めて安定であることを示す.Pt磁性がFe3dのスピン偏極から誘起されるものと考えると,FeとPtの磁気状態の両方が圧力下で変化しないといえる.さらに,大きな軌道磁気モーメントを発現させるPtのスピン-軌道相互作用も格子の変形に強く依存しないことが考えられ,これはPt磁性特有な特徴である.一方で,規則構造(L1_0)と不規則構造(fcc)のFePt合金を比較した場合,そのPt磁性に明らかな変化が見られる.このことから,L1_0の大きな磁気異方性にはFeとPtの(001)面が交互に積層する結晶構造が鍵ではないかと考えられる. 高磁場(>10T),高圧(>20GPa)に低温(<4K)を加えた極端条件でのXMCD測定のツールとして超伝導マグネット用小型DACをテストした.その結果,このDACは温度変化に伴う圧力変化がないため,これまでより簡便に極端条件下でのXMCD測定が可能となった.このため,FePt以外にも様々な磁性材料の極端条件下XMCD測定が予定されており,今後の発展が期待される.
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