フェライトなどでよく知られるスピネル酸化物の酸素を硫黄やセレン、テルルなどで置き換えた、いわゆるカルコゲナイドスピネルは、磁性や電気伝導において様々な物性を示す。たとえばCuRh_2S_4がTc=4.7Kの超伝導体であるのに対し、CuIr_2S_4はT_<MI>=226Kで金属絶縁体転移を起こすことが報告されている。最近申請者のグループはCuRh_2S_4が圧力誘起超伝導-絶縁体転移を起こすことを見出した。本研究ではカルコゲナイドスピネル化合物で見られる圧力誘起の超伝導-絶縁体転移の発現機構を明らかにするため、その特異な物性について詳細に調べていく事を目的としている。CuRh_2S_4のSイオンを、よりイオン半径の大きなSeイオンで置き換えたCuRh_2Se_4の圧力下(P<8GPa)電気抵抗率測定を行った。その結果、圧力によってTcが緩やかに増加し、また電気抵抗が増大することをみいだした。この振る舞いは、CuRh_2S_4の圧力下電気抵抗率の低圧領域の振る舞いによく似ており、さらに高圧にすることで、CuRh_2Se_4もCuRh_2S_4同様、圧力誘起の超伝導絶縁体転移を起こす可能性がる。これらの事をまとめ、日本物理学会(2004年3月、九州大学)および、国際会議(2004年11月、米国フロリダ)で報告した。またCuRh_2S_4の圧力下帯磁率測定を行い、超伝導パラメータの圧力依存性を詳細に調べた。これらをまとめ日本物理学会(2004年9月、青森大学)で報告した。CuRh_2S_4の高圧下絶縁体相の低温における結晶構造解析を大型放射光施設(SPring8)を利用しておこなった。常圧では立方晶であった結晶対称性は高圧低温下ではより対称性の低い結晶構造に変化している事を見いだした。これをまとめ日本物理学会(2005年3月、東京理科大学)で報告する。
|