研究課題
本研究は、カイラル磁性体という新しいタイプの電気的・磁気的環境を舞台として発現する現象を物性理論の立場から統合的に理解しようという新しい試みであった。本研究計画最大の特徴として、物質合成、物性測定を専門とする実験研究者と緊密な連携をとりながら基礎理論構築を進めた点が挙げられる。本計画最終年度は、井上らによる分子性カイラル磁性体、秋光らによる無機系カイラル磁性体の創製と特異物性の解明を目的とする共同研究を進めた。研究の初期段階から最近に至るまでは、実験主導で新奇現象の発見が相次ぎ、これに対する理論的解釈を与える段階であった。18年度の成果として、磁場下での磁化や非線形交流磁化のアノマリーがカイラルソリトン描像で理解できることがわかり、これらの系でカイラル磁気構造が実現している傍証を与えることができた。さらに、カイラル磁性体と液晶とのアナロジーに着目してスピン整合欠陥のウィグナー結晶状態を議論し、物理的に意味のあるスピンカレントの理論を作ることに成功した。この過程で、平成18年度より、数理物理的手法を得意とするアレキサンダー・オブチニコフ氏(ウラル州立大学理論物理学部・助教授)と共同研究を行う機会を得た。この結果、物性基礎理論の立場からも本質的に新しく興味深い課題が山積していることが浮き彫りとなった。特に、現在活発に研究の進んでいるスピントロニクスと関連の深い諸問題が潜んでいることが明らかになった。本研究計画では、これまでに培った連携体制を維持しながら、理論研究として独自の新分野を開拓できたものと考えている。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (6件)
J. Magn. Magn. Mater. 310
ページ: 1386
ページ: 463
J. Phys. Soc. Jpn. Supplement (印刷中)
Journal of Physics : Conference Series (印刷中)
Phys. Rev. B 74
ページ: 224419
JETP Letters 84
ページ: 446