研究概要 |
液体アルカリ金属(Rb,Cs)の圧力誘起電子転移を観測するために、高温高圧発生装置の開発を行い、その装置を用いて、放射光を用いた高温高圧下におけるX線回折実験を行った。 高圧条件を発生するために、ダイヤモンド・アンビル装置(DAC)を用いた。高圧下で温度を上げ、液体状態を作るのにヒーターによる抵抗加熱を行った。これまで問題となっていた、昇温時の圧力低下を防ぐために、昇圧装置としてベローズを用いたガス圧による加重コントロールシステムを作成した。その結果、これまで昇温時に、十数%程度にまで落ちていた圧力を、ほぼ一定の圧力に保持できるようになった。また、高温下において目的の圧力を得ることができるようになった。またDACを用いることにより、これまで問題となっていていたアルカリ試料と試料容器の反応を防ぐこともでき、高圧下においても良好な液体の回折パターンを得ることができるようになった。 加圧に伴って、液体Rbの構造因子の第一ピークの半値幅が、約4万気圧より増大し始め、約12万気圧においても、その上昇は続いていた。これは液体中で、約4万気圧から電子転移が起こり始め、約12万気圧においてもその転移が終了しないことを示している。これまでの理論計算の結果では、約4万気圧から起こるという見解と、約8万気圧でもまだ起こっていないとする見解が対立していたが、今回の結果は前者の結果を支持する。これら液体に見られた圧力誘起電子転移は、結晶相における電子転移とくらべ、大幅に低い圧力で起こっている。このことから、液体では(原子のTopological disorderのために)s-d準位の逆転がより鋭敏に構造に反映されることがわかった。
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