研究概要 |
本年度はNp化合物の中性子回折実験を実施可能にするために、まず密封セルの開発と製作・試験に着手した。 さらに実験を安全に実施する目的で、専用の4:K冷凍機を購入した。これらの機器を用いて、本年度は重い電子系超伝導体PuIGa5と同じ結晶構造をもっNp-115系化合物の中性子散乱実験を行い、この系の磁性について調べた。 NpCoGa5はTN=47Kで反強磁性秩序を示すこと、またc軸方向に磁場を印加すると、5T以下の低磁場でメタ磁性転移を示すことが報告されている。単結晶を用いた中性子回折実験から、TN以下で伝播ベクトルg=(001/2)、Np当たり0.84μBの磁気モーメントがc軸を向いた磁気構造を持っことを明らかにした。これは同じ価電子数を持つ、UPdGa5,UPtGasと同じ磁気構造である。さらに磁場中中性子回折を行い、1.5:Kで磁場を印加していくと、4.6Tにおいて磁気モーメントがc軸を向いた単純な強磁性へと転移することを明らかにした。この結果から、NpCoGa5ではc面間の反強磁性結合が弱く、c面内の強い強磁性相互作用が高い転移温度の起源となっている事を明らかにした。 NpFeGasについても中性子回折実験を行い、ZTN=118:K以下でc面内に磁気モーメントが向いたq=(1/21/20)の反強磁性秩序を示すことを明らかにした。この磁気構造は、d電子数が一つ多いNpCoGa5と比べて、磁気モーメントの向きだけでなく、相互作用の符号まで完全に逆転している事を見出した。また強度解析から、NpFeGa5ではINpに加え、Feもまた磁気モーメントを有することを見出した。U-115系では、遷移金属サイトに磁気モーメントを有する例はない。さらに磁気反射強度の詳細な測定から、80K近傍にもう一っ転移があることを明らかにした。現在この転移の詳細を明らかにするために実験を進めている。 Np-115ではゴ電子数の変化により多様な磁気構造が実現しており、残るNi, Rh等の実験も進めていくことでその起源について明らかにしていく。
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