本研究の目的は、粉体系の重力場の影響を調べ、流体乱流や非平衡統計物理学的観点から粉体気体の統計則を探ることにある。平成16年度は本研究計画の初年度であり、主として、以下に述べる項目に関して研究を行い、これらの研究成果の一部を、学会報告として公表した。 1.粉体気体と流体乱流との類似性に関する理論解析やシミュレーション: 2次元非弾性剛体球モデルにおいて発達した乱流状態に着目し、高レイノルズ数や高密度系に焦点を絞って、初期ステージから最終アトラクター状態に至るまでEvent-Driven型分子動力学法を用い系統的に調べた。エネルギースペクトルのスケーリング指数や最小温度スケールの評価などを行い、低密度系準弾性極限においては、エンストロフィー散逸率とクラスター不安定性の関係やエンストロフィーカスケード機構の存在を明らかにした。高密度系の最終アトラクター状態では、現象論では予測不能の1つの渦になるモードが新たに発見され、2次元乱流におけるBose-Einstein凝縮との関係づけられる。これらの結果は途中経過であるが、2次元非弾性剛体球モデルは2次元乱流の概念を使って部分的に理解できる可能性を示した。 2.微小重力場における粉体振動層に関するシミュレーションや実験: 微小重力環境では地上重力下粉体振動層とは異なり、速度依存型反発係数など衝突則の違いが動力学に大きな影響を与えることが予測される。そこで、1次元及び2次元系粉体気体のシミュレーションを行った結果、微小重力場では粉体粒子は極めて弾性衝突に近い振る舞いし、動力学と統計的性質が衝突則の違いにより明らかに異なることがわかった。また、実験的観点から小型加振器を購入し予備的に稼動させた。実際に粉体振動層の実験を行っている専門家と研究打ち合わせを行い、実験装置に関する専門知識の提供を受けた。
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