電子系、量子スピン系をはじめとする低次元強相関系(特に1次元系)は、大きな量子揺らぎのために、通常の3次元系ではみられない、非摂動的量子効果が顕著に現れることから、理論、実験の両面から注目を浴びている。現実の系としては、量子細線、カーボンナノチューブ、その他、擬1次元的物質など、微細加工技術の進歩で現実に低次元系が作られるようになっている。 申請者は、一次元電子系に現れるイジング型相転移の解析を行い、従来行っていたレベルクロス法の他に現象論的繰り込み群を行うことで、相転移の解析を行った。特に、交替ポテンシャルのあるハバード模型においてはモット絶縁相からバンド絶縁相への相転移を起こす際に、スピンと電荷の相転移が独立して起きることがこの解析から明らかとなった。またひねり演算子との対応も議論した。また、有機導体を記述する模型として知られる1/4フィリングのボンド交替ハバード模型に対しても解析を行い、電荷秩序相とボンド秩序相の相転移を調べた。 更に、近年注目されているフラストレーションのある系、例えばカゴメ格子、チェッカーボード格子、パイロクロア格子において、厳密なブラケット状態を基底状態として持つ一般化ハバード模型が構成できることを射影演算子の方法を用いて示した。 また、標準的な場の量子論を用いた一般の3次元系の理論研究も行った。摂動的ルジャンドル変換を用いた自発的対称性の破れの解析を光学格子上のポーズ気体に適用し、そこで起こるモット相と超流動相との相転移について調べた。
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