本年度は主に光ポテンシャル成型に用いる空間光変調器(SLM)の性能チェックとBEC制御の1つの例である原子波ビームスプリッタ用の光ポテンシャル設計に重点を置いて実験を行った。 まず、SLMの性能チェックではブレーズ型回折格子のパターンをSLMに入力させ90%以上の回折効率を達成した。またSLMに加える位相情報を動画化することで回折光の位置を自在に変えることができることを確認した。これらの結果はこの回折光を用いて比較的簡単に光トラップを制御できることを意味する。 そこで次に、BECの動的制御の1つのデモンストレーションとして、1本の光ビームを2本に断熱的に分裂させ、それに捕獲されているBECを分割する実験の準備に取り掛かった。これを実現するために、1波数の回折格子が2波数の回折格子に徐々に変化していく位相情報の動画を作成した。これをSLMに入力すると、始め1本だった1次回折光が、徐々に2つの波数に対応する2本の1次回折光に分裂する。動画の再生速度を変えることで分裂の時間もかなり自由に制御できることも分かった。これを光トラップ用のトラップ光として用いればBECをトラップ中で2つに分割することができるようになる。 実際にBECにこのトラップ光を照射してみると、確かに光ビームの変形に追従して原子集団が2つに分裂する様子が確認された。しかし一方で、トラップ光の離調が適切ではなく光トラップ中でBECが急速に加熱されていることも判明した。そのため、安定なBEC制御を実現するにはトラップの長寿命化が必須であることが分かった。
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