我々はボース・アインシュタイン凝縮の生成を目指して、原子集団の冷却を行っている。その方法として、本研究ではレーザー冷却された原子を、さらに冷却するためにパルス的に外部ポテンシャルを相互作用させ、デルタキック冷却を行い、磁気トラップへ移行する。 まず購入した光学部品を用いてレーザー冷却実験の測定系を再構築し、効率の良い測定が可能となった。また、購入したガラスセル内でナトリウム原子のレーザー冷却と磁気光学トラップを行い、原子集団を80マイクロケルビンの温度にまで冷却した。そして、トラップ光遮断後、クローバーリーフコイルに電流を200A流しパルス的に印加することにより、デルタキック冷却の実験を行った。まず、キック時間を2msから10msまで変化させながら、トラップ原子集団の空間分布を共鳴光の吸収画像としてCCDで観測した。このとき、キック時間ごとに原子集団の半径と温度が振動する現象を観測した。特に、半径が大きいときに原子集団の温度が低くなり、半径が小さいときに原子集団の温度が高くなった。これは、半径の振動と温度の振動が逆の位相を持つことを示しており、キック後の原子集団が位相空間で回転している証拠となる。これは、デルタキック冷却の研究としては、初めての実験的観測である。 また、原子集団が広がるにつれ密度が減少するため、吸収での観測は困難となる。そこで、この対策として、共鳴光を原子集団に照射し、蛍光測定を行うことを考えた。この方法により、原理的には密度が薄い原子集団を少数個の原子でも観測することが可能となる。そこで、購入したAPDモジュールにより蛍光測定を行う予備実験を行った。
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