原子リソグラフィーにおける原子描画性能を向上させるため、原子の波動的性質を駆使したリソグラフィー法に必要なコヒーレント原子ソースの開発とその発生システムの構築を目指した研究を実施した。光ファイバーを用いた再現性の良い光学実験装置系の整備、吸収イメージング法を使った原子特性計測法の開発、及びこれらに必要なPC制御プログラムとインターフェースを開発した。高い信頼度を有する低温原子ソースの発生装置を整備できた。本研究成果について応用物理学会をはじめ4件の口頭発表を行った。 遠共鳴レーザー光を使った原子リソグラフィー法の開発において、光マスクの長さ(相互作用長)及び原子ソースとなる原子ビームの広がり角が描画特性に及ぼす影響を解析した。光マスク長を小さくして原子と相互作用する光の場の強度を増大させるほど、生成される微細構造物の細線化が達成され、本スキームでは加工の微細化に向けて光マスク強度が本質的である事実を明らかにした。原子ビームの平行度を増せばさらに描画特性は改善され、Yb原子の禁制遷移を用いたコリメートYb熱原子ビームを使えば、最終的に10nmレベルの細線構造を作成可能である見通しも得た。現在、原子線の速度分布が描画性能に与える効果を調査している。上記の研究成果について、国際会議で2件(IQEC2005、ISAMOP2006)、国内では応用物理学会で1件の口頭発表を行った。 本研究の実施にあたっては高度に周波数制御されたレーザー光源の整備が必須となるが、この実現のため、複数台のレーザー装置を同時に安定化させる技術をRb原子(及びその遷移波長領域)を対象に開発した。当該開発成果は論文誌(Opt.Commun.)に掲載された。
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