研究概要 |
データベースの公開:線虫C.elegansの神経細胞間結合のデータベース(K.Oshio, Y.Iwasaki,他7名,"Database of Synaptic Connectivity of C.elegans for Computation", Keio Future, No.3(2003))を誰もが自由に利用できるようにダウンロード用のホームページを作成し,http://www.bio.keio.ac.jp/ccep/として公開した.また,線虫の研究情報を扱っている国内外の各ホームページから上記URLへリンクを張ってもらい,データベースの存在を認知させた. 実験データからのモデルパラメータ推定手法:近年,電気生理実験により線虫の神経細胞における膜電位が測定できるようになってきたので,その膜電位の時系列データから神経回路のモデル方程式中のパラメータ値を推定することを考えた.しかし,その測定データのノイズレベルは高く,十分な精度でパラメータ推定を行うことができない.そこで,ノイズを含む時系列データから非線形モデル方程式中のパラメータ値を推定する手法を提案し,計算機実験によりその有効性を確認した(Physica D,投稿中). 部分神経回路に対する有効理論:統計的手法を用いた部分神経回路に対する有効理論をMcCulloch-Pittsモデルに対して提案し,タッチ反応という線虫の行動について考察を既に行っている(Y.Iwasaki and S.Gomi, Bulletin of Mathematical Biology, 66(2004)727).しかし,神経細胞の発火が階段的であるMcCulloch-Pittsモデルは線虫の神経系に対するモデルとしてあまり適していないことがわかった.そこで,ケーブル方程式(膜電位に関する微分方程式)に対する有効理論を提示した(15th International C.elegans Conference,2005年6月発表予定).また,その有効モデルを用いて線虫の行動をシミュレートしたとき,神経回路の定常状態における結果と非定常状態における結果の違いについて考察した.
|