研究概要 |
本年度は以下の研究を行った。 (1)2重ネットワークの破壊強度:関節は柔らかいヒアルロン酸のネットワークと硬いコラーゲンのネットワークが絡み合った丈夫な物質である。このような2重ネットワークの破壊強度について,考えうるもっとも簡単なモデルを提唱し,解析を行い,強度が増す条件を示した。 (2)複合表面での濡れ転移:表面にテクスチャーがついた基盤は,そのうえの水滴にとっては「空気と基盤」あるいは「水と基盤」の複合表面となる。その様な水滴と接触状態と接触角の関係について,物理の相転移の観点から研究し,その物理を示した。 (3)生体模擬複合系の破壊強度:最近の研究で,真珠に見られる層状構造「真珠層」を例に,硬い層と柔らかい層が重なると丈夫になることを示してきたが,印象派物理学の立場からスケーリング解析だけに頼っていままでの理論を再現し,物理的なからくりを鮮明に示した。 (4)その他:人工筋肉に関連して液晶複合系の相転移や動力学を研究してきたが,本年度は,基本に立ち戻りネマティック液晶の相転移の標準理論を新しい場の理論の方法で解析した。その結果,教科書では常識と思われている事実を覆しかねない結果を得ており,現在,論文を投稿中である。この他に,シート状の物質の破壊強度を測定する装置を自作でくみ上げて予備実験を行い,破壊に関する実験の準備を進めている。また,論文での成果発表に加え,大きな国際学会から相次いで招待講演を受けたり,口頭講演に採択されるなどの機会を利用し,国際的に成果の発表に努めている。
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