研究概要 |
アスペリティの規模依存性(スケーリング)について,地震波スペクトルより検討を行った.特に孤立した小アスペリティの繰り返しすべりによると考えられている相似地震とその他の地震との違いについて注目した.現在のところ,東北地方太平洋下のプレート境界近傍で発生する地震については,相似地震とその他の地震には顕著なスケーリングの違いを見出すことはできなかったが,より深部で発生する地震はより大きな応力降下量を持つことが分かった.また,岩手県釜石市沖のケーブル式海底地震計を用い,詳細な震源分布を求めた結果,プレート境界近傍での地震活動は相似地震を含む小クラスターに限られることが分かった. ダブルディファレンストモグラフィー法により,2003年宮城県北部地震・2000年鳥取県西部地震・1995年兵庫県南部地震・2001年芸予地震の震源断層およびアスペリティ周辺の地震波速度構造を詳細に求めた.その結果,それらの地震について,アスペリティの領域は断層面上の高速度域に対応することが分かった.このことはアスペリティの成因を考える上で重要な情報であると考えられる. 2001年芸予地震・2003年宮城県沖地震などのスラブ(沈み込む海洋性プレート)内大規模地震ではスラブ地殻のみならずスラブマントルまで断層破壊が達するが,それらの地震の震源域にはスラブモホ面付近からマントル上部でのやや深部の定常的に活発な地震活動やスラブマントル内低速度域として特異性が存在する可能性が示唆される.
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