研究概要 |
日本及び米国では,密度・品質ともに従来の地震計網を圧倒的に凌駕する新世代地震計網が完成もしくは完成されつつあり,そのデータにはこれまで我々が手にすることができなかった地球内部構造に対する情報が豊富に含まれていると考えられる.本研究計画の目的は,このようなデータを十分活かしきるだけの最先端の解析手法・ソフトウェア開発研究を行い,地球内部構造研究のさらなる高度化を実現することである.本年度は本目的を実現すべく,新たな地震波形データ解析手法を開発し,国際論文誌に成果を発表した.具体的な成果は以下の通りである.(1)地震学的な地球内部構造推定をする際に問題となる,data coverageの大きな不均質性を解決するため,data coverageを評価する新たな指標を定義した上で,これを均一化するdata weightingの手法を開発した(Takeuchi & Geller 2004,GJI).従来のdata weighting手法を用いて得られたモデルと比較し,より効率的にデータに含まれるrobustな情報が抽出可能になったことを示した.(2)地震学的にマントル構造推定をする際に重要となる,地殻の不均質構造の影響の正確な補正を実現するため,新たな高精度地殻補正計算手法を開発した(Takeuchi 2005,GJI).地殻は地球の中で最も大きな不均質を持つため,この影響をどこまで正確に補正できるかは,得られるマントル構造モデルの精度を左右する.従来の地殻補正手法は地殻の不均質構造を球対称初期モデルからの無限小の摂動であると取り扱わざるを得なかったのに対し,本研究では有限摂動を厳密に取り扱う定式化を行うことにより,地殻補正精度を大幅に改善した.
|