研究概要 |
西オーストラリア・ピルバラ地域で採取したFortescue Groupに属する3つの太古代洪水玄武岩について古地磁気測定をおこなった.用いた試料は,Mount Roe玄武岩,Kylena玄武岩,Maddina玄武岩の3種で,生成年代は約28億〜26億年前である.ピルバラ地域の岩石の残留磁化は落雷による影響を広く受けていることが知られており,自然残留磁化(NRM)の方位が非常にばらついている試料は落雷によるLIRM (Lightning-induced IRM)を獲得している疑いがある.磁化強度が非常に強い試料,磁化強度/帯磁率が非常に大きい試料は交流消磁をおこなうと低い消磁段階で著しく磁化が減衰し,その磁化成分は単成分に近い.これらはLIRMの特徴であり,その磁化は非常な強磁湯中で獲得されたLIRMである可能性が強い.磁化強度が弱い試料、磁化強度/帯磁率が小さい試料について交流消磁をおこない,磁化方位の決定をおこなった.Mount Roe玄武岩については試料が何枚の溶岩に属していたか不明であるが,傾動補正をおこなうと磁化方位がまとまり,褶曲テストに合格する.これは褶曲前磁化であることの証拠であり,試料が初生磁化を保持している可能性が高いことを示唆している.Kylena玄武岩についてもある程度まとまった磁化方位が得られたが,磁化の起源については今後の検討課題である.Maddina玄武岩については今回測定した試料からは安定な磁化成分が得られなかった.いずれの試料についても,IRM獲得実験の結果,磁化が400mT程度で飽和することから,その主要な磁性鉱物が磁鉄鉱であることが確かめられた.この結果の一部は,これまでの成果と合わせて,地学雑誌(吉原,2005,印刷中)に発表される.
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