彗星の核の強度を明らかにするために、以下の研究を行なった。 彗星の核はミクロンサイズの粒子の集合体であると考えられている。したがって彗星核の強度およびその進化を議論するためには、微粒子集合体の強度を知る必要がある。微粒子集合体の温度が上昇すると焼結が進行するため、集合体の強度は大きく変化する。彗星核は周期的に太陽に接近するため、焼結の効果は特に着目しなければいけない。そこで、Sirono and Greenberg(2000)で行なわれた微粒子集合体の強度の解析的見積もりを拡張し、焼結が進行している場合の強度を算出した。その結果、以下の興味深い結果が得られた。微粒子集合体の空隙率が大きい場合、集合体の変形は粒子間の転がりによって進行する。焼結が進んでいない場合、粒子間の結合を切断することなく粒子間の転がりが進行する。これは、粒子間結合において内部が圧縮の応力場、外側が引っ張り応力場になっておりスムーズに転がれるためである。このことは実験的にも明らかになっている。焼結が進んでいない場合の微粒子集合体の破壊強度は粒子間結合を引っ張りにより切断するのに必要な力に比例することになる。一方、焼結が進行すると、粒子間結合における応力場は緩和してしまう。このため、転がりによって粒子間の結合は切断されることになる。微粒子集合体の空隙率がおおきいと、粒子間結合に働く転がりトルクが増加するため、引っ張りで切断するよりもより小さな力で粒子間結合が壊れてしまう。このため、焼結の進行がある程度少ないと、微粒子集合体の強度がかえって低下するという結論が得られた。 簡単な応用として、コンドリュール形成の衝撃波モデルにこの結果を応用した。その結果、衝撃波通過以前の温度によっては、衝撃波通過にともなってコンドリュール前駆体は破壊されてしまうという結論が得られた。この結果はAstronomy and Astrophysics誌に投稿し、現在査読中である。
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