「地球シミュレータ」を用いて、異方性媒質電気伝導度モデルを効率的に探索するインバージョンコードを作成した。このコードはホール効果とよばれるローレンツ力の影響が無視できないような場合、つまりモデルパラメータである3階の電気伝導度テンソルが非対称テンソルの場合であっても、構造を推定することが可能である。非対称テンソルの構造を求める場合の計算では、探索勾配方向を求める際の効率的な計算のために利用している方程式系の相反性において、テンソルの転置をとる必要があることがわかった(対称であれば、転置しても元と不変であるので、その操作は不要である)。モデル探索には準ニュートン法を利用した。これは、反復勾配法の一種であるが、ニュートン法のように目的関数の2階微分の逆行列は必要とせず、代わりに近似行列を利用することが大きな特徴である。一般に目的関数の2階微分の逆行列計算は、仮に先述の相反定理を利用した場合であっても大量のフォワード計算を必要とする一方で、準ニュートン法を採用すれば計算量の大幅な削減となり、計算効率が非常に高まる。さらに、これまでは球形地球にのみ適用することを念頭におき球座標系で記述していたが、一般の物理探査でも応用できるように半無限媒質の平面地球に対するコード開発も並行しておこなった。また、昨年度から引き続き、地磁気データの収集・データベース化を進め、さらに2年分の世界中の地磁気観測点およそ100点のデータを追加した。今後これらのコード・データを用いて、地球内部の電気伝導度構造を推定する予定である。
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