研究概要 |
平成16年度は結合モデルの構築に向けて以下の2項目を実施する計画であった. 1)大気熱収支および氷床流動過程の定式化 2)そのための計算コードの改良 このうち大気熱収支の定式化ならびに数値コードの改良については,二酸化炭素氷雲による散乱温室効果を取り入れた放射対流平衡モデルを新たに構築し,古火星環境下における二酸化炭素・水蒸気大気の温室効果の評価を行った. 放射対流平衡モデルの構築においては波長分解計算の厳密化が第一の目標であったが,ラインバイライン法とバンドモデルの併用によって,この目的の大部分を達成することができた.さらに,古火星に想定される高圧の二酸化炭素大気において重要な温室効果源と考えられる二酸化炭素氷雲の放射過程に関して,温室効果の強さを左右する雲の柱密度が雲層の放射冷却率に依存して増減し,安定値が雲粒の昇華凝結平衡によって決定される可能性を明らかにした.放射対流平衡と雲粒の昇華凝結平衡を同時に要請することによって,雲による放射過程を記述するパラメータ間の依存性を明らかにした.以上の結果を踏まえて,古火星環境下での高圧二酸化炭素大気の温室効果と地表への昇華凝結に対する安定性についてパラメタスタディを行った.散乱過程の計算の近似精度についてさらなる検討を行うことが今後の課題として残された. 一方,氷床流動の定式化とその数値計算コードの作成については,大気モデルの構築に予想外の時間を要したため,これを十分に進めるには至らず今後の課題となった.
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