研究概要 |
平成17年度は結合モデルの構築に向けて以下の2項目の実施を計画した. 1)大気熱収支・放射対流平衡モデルの確立・特に多方向分解放射伝達計算と解析 2)二酸化炭素氷床の流動過程の定式化と予備数値実験 古火星に想定される高庄の二酸化炭素大気の大気熱収支・放射対流平衡モデルの構築においては,前年度から進めている波長分解計算の厳密化と二酸化炭素氷雲による散乱温室効果の導入と解析に加え,今年度は多方向に分解した放射伝達計算コードへの改良を行った.この改良は太陽放射・惑星放射の大気分子・雲粒子による散乱・吸収過程を十分に表現するために必要不可欠なものである.今回は離散方向座標を導入することによって放射伝達計算コードを書き換え,いくつかの簡単な状況を与えた試験的計算を行い,十分な精度を持った放射伝達計算ができていることを確認した.太陽定数,大気圧,凝結核密度,相対比湿などを変化させた,古火星大気の放射対流平衡構造・熱収支・二酸化氷雲による温室効果についてのパラメタスタディを現在進めつつある.一方,昨年度に開発した粗い放射伝達計算モデルを用いた解析から,1気圧以上の大気圧と10^<10>m^<-2>前後の凝結核数密度があれば38億年前の火星において気温がH_2Oの融点を超える温暖な気候が実現されることが新たに示唆された.この結果については改良数値モデルを用いた再解析を予定している。 一方,火星大気の極域地表面への凝結によって形成される二酸化炭素氷床の流動過程について,その数値計算のための流動則と涵養消耗過程についての基礎的な定式化を行った.数値コードの完成とそれを用いた数値実験の実行は今後の課題となった.
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