研究概要 |
海洋上のCO_2フラックスの測定方法として、陸上で信頼性が確認され数時間以下の短い時間スケールで評価可能な渦相関法などの微気象学的手法を適用することが期待されている。海洋上ではCO_2の変動が微小であることから、渦相関法によるフラックスの精度の評価を慎重に行うことが重要となる。そこで、定常性や乱流状態など、渦相関法の仮定を満足したデータのみを選抜してフラックスの変動を捉えきれているかを確認する必要がある。本年度は渦相関法により測定されたCO_2フラックスについて、陸上のフラックス測定で一般に利用されている品質管理を行った。 観測は新潟県上越市大潟区にある京都大学防災研究所附属大潟波浪観測所の波浪観測桟橋で行った。解析には2006年2月23日から4月30日のデータを用いた。超音波風向風速温度計にはDA-600、CO_2・H_2O変動計にはクローズドパス型ガス分析計としてLi-6262を用いて10Hzでサンプリングし、15分の統計値測定を行った。 乱流フラックスデータの選抜手法として,(a)摩擦連度による選抜,(b)定常性テスト,(c)モニン・オブコフ相似則による選抜の3つを行った.モニン・オブコフ相似則については,乱流状態にある物理量の統計量は大気安定度を用いて一義的に表すことができる。鉛直風速wの無次元標準偏差s_w/u_*について、Kaimal and Finnigan(1994)による式を用いて測定値と式の値の比が50%以内にないデータを除去した。また、CO_2濃度cの無次元標準偏差s_c/|c_*|について、猪原他(2004)による式と比較を行った。測定値は中立時に式(2)より3倍程度大きい値で分布しているが、不安定時にζの-1/3乗に比例して減少していた。よって、本研究では平均値から出された近似式を用いて、測定値と近似式の値の比が60%以内にないデータを除去した。 渦相関法による品質管理後のCO_2フラックスは下向きを示しており、またバルク法によるCO_2フラックスと比較したところ、大きな矛盾はなく一致した。
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