本研究は、トカラ海峡での黒潮流路の変動と流速断面分布との関係、流速断面分布の変動特性、流路変動と流速断面分布の変動の関係を観測資料から明らかにすることを目的として行われている。 平成16年度の研究実績の概要は以下の通りである。 トカラ海峡を横断する大島運輸の「フェリーなみのうえ」に搭載した超音波流速分布計(ADCP)により、2004年は160個の流速断面資料を得た。また、鹿児島大学水産学部の練習船「かごしま丸」の実習航海に便乗し、トカラ海峡のフェリー航路上で5月15日-16日にCTD・LADCP観測、11月28日にXCTD観測を行った。11月は荒天のため予定していたCTD・LADCP観測は行わなかった。 前述の流速断面資料は2003年にも165個が得られているので、2004年分と合わせて325断面について解析を行った。トカラ海峡から北太平洋に流出する流速が50cm/s以上の流れ(黒潮)の流量には10日周期および年周期の変動があった。10日周期の変動は黒潮流軸位置指標(KPI)にもみられた。 黒潮流路は2004年7月頃から大蛇行期に入ったといわれている。先にあげた流量は2004年の5月を境に前半年の平均値が27Svであったのに対し後半年の平均値は17Svであり、黒潮流路が大蛇行期に入った後は流量が少ない状態を保っていた。また、流速断面分布では大蛇行期に入ってからは流速が50cm/s以上の強流コアが最大でも深度400mまでしか発達せず、最大流速も表層に出現することが多かった。 黒潮流路の変動と流速断面分布との関係を調べるため、流速断面分布パターンの分類を行ったが、黒潮流路が大蛇行期に入るという想定外の事が起きたため、これを考慮して再検討することにした。
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