本年度は、大気エアロゾル及び霧粒子の数密度粒径分布の測定方法の確立と、温度コントロールによる大気エアロゾルの化学組成の変化の把握、及び観測地点である丹沢大山の大気質の把握を目指して研究を進めてきた。まず、数密度粒径分布の測定方法の確立に関しては、大気エアロゾル及び霧粒子の粒径範囲を計測できる2台のパーティクルカウンターを購入し、予備的な観測を行なった。温度コントロールによる大気エアロゾルの化学組成の変化に関しては、予備的なフィールド実験として、フィルター或いはインパクター上に採取されたエアロゾル試料を段階的に加熱処理することによる化学組成の変化に関するデータを得ることができた。この実験から、100℃で硝酸アンモニウム粒子、塩化アンモニウム粒子が、400℃で硫酸アンモニウム粒子が除去されること、また有機炭素成分は全量か水溶性画分か、粗大粒子か微小粒子か、更には人為起源エアロゾルの影響の大小によって揮発の温度依存性が異なっていることがわかった。これらの知見から、パーティクルカウンターによるエアロゾル及び霧粒子の連続観測の際に、ラインを加熱処理することによる数密度粒径分布の変化から、化学成分組成やその履歴に関する情報をある程度読み取ることが可能となった。丹沢大山の大気質の把握では、観測点で霧粒子や大気エアロゾルの化学組成、気象因子の観測を行なった。この観測から、霧粒子中の化学組成が、霧底高度や風向(山風か谷風か)に強く依存していることが明らかとなった。これは、霧過程によるエアロゾルの変質を議論する際、霧底高度や山谷風システムの消長が重要であることを意味している。
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