研究課題
米国の火星周回機Mars Global Surveyorに搭載された赤外干渉分光計TESで得られた大気熱放射スペクトルから、水平スケール数十〜数千kmのメソスケールでの擾乱のスペクトルを調べた。昨年度は衛星軌道に沿った大気温度の分布をフーリエ解析することで空間スペクトルを得る手法を確立したが、今年度はその手法を3火星年のデータに適用し、緯度・季節・年による違いを調べた。得られたスペクトルには、傾きが低波数側で大きく高波数側で小さいという傾向が見られる。地球で見られた波数依存性に近いものもあるが、特に高波数側ではノイズを考慮しても-5/3乗より緩やかである。これは水平乱流では説明できず、内部重力波の寄与が考えられる。緯度・季節依存性としては(1)夏冬期には冬半球高緯度でパワーが大きく、次いで冬半球中緯度でパワーが大きい。(2)春秋期には両半球の高緯度でパワーが大きい。という傾向がある。これは南北温度傾度が大きい場所でパワーが大きいことを意味しており、傾圧不安定や偏西風に伴う重力波の励起や傾圧擾乱からのカスケードが考えられる。また、年による違いが大変大きく、各緯度でのパワーの季節変化は年々変動に覆い隠されてしまいがちである。この他、極域に焦点を当ててドライアイスの極冠によって励起される大気波動の構造を探った。南極域の夏期に限って東西波数1の波動構造が存在し、高度とともに西にずれた位相構造を持つことが明らかになった。この波動はプラネタリー波と解釈できる。
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Geophysical Research Letters 32
ページ: doi:10.1029/2005GL023819
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