研究概要 |
今年度の作業では全球化学気候モデルCHASER (Sudo et al., JGR, 2002)中の硫酸塩エアロゾルのシミュレーションを改善し、さらに無機・有機炭素、海塩粒子、土壌(ダスト)粒子のシミュレーションを新たに導入した。硫酸塩の生成に重要な雲水中の二酸化硫黄(SO2)の液相酸化反応は雲水の酸性度(pH)に大きく依存するが、本作業によりアンモニア・土壌粒子(ダスト)による雲水中和過程が新たに表現され、より現実的な硫酸塩の計算が可能となった。アンモニア(アンモニウム)のシミュレーションとしては熱力学平衡モデルを結合し、硝酸・硫酸・アンモニアの気相・エアロゾル相の平衡系を表現している。改良を行ったモデルによる気候値的な実験結果からは特に陸地上でアンモニア(アンモニウム)による中和が大きく、また亜熱帯域陸地上の境界層内では土壌ダスト粒子による中和が無視できないことが示唆された。本モデルではアンモニアと土壌粒子が降水のpHに与える影響も全球的に表現可能とした。さらにその他のエアロゾルとして無機・有機炭素、海塩粒子の計算を新たに導入し、硫酸塩と合わせて、粒子表面での不均一反応および気候モデル中の放射場・雲過程に反映させる作業も行った。このエアロゾル導入作業では全球エアロゾルモデルSPRINTARS (Takemura et al., JGR, 2000)の簡略版を土台としたが、雲凝結核(CCN)数の計算方法や降水沈着過程についてはCHASERの過程と整合的なスキームを導入している。また化学過程中で考慮している粒子表面での不均一反応については、今回硫酸塩以外にも種々のエアロゾルの影響を考慮した結果、汚染域(北米、ヨーロッパ、中国)境界層で反応速度が2-3倍に上昇することが確認された。このような結果について各観測ネットワークによるデータを用いた評価を行った。
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