研究概要 |
本年度は以下の研究を実施した. 1.長野県北部,高野層ボーリングコアのテフラ層序 本ボーリングコアは約16万年前から約3万年前のもので,当時の湖に堆積したシルト層に多数のテフラ層が挟在している.コア中のテフラ層115試料と地表に露出しているテフラ層19試料について岩相記載と岩石学的検討を行った.さらに肉眼で検出できないテフラ層を同定するために,シルト122試料を水洗処理し広域テフラ層起源の火山ガラスを検出した.これにより広域テフラ層であるAso-4,K-Tz, Aso-A〜D, Ata, SK, Aso-3,Aso-2を同定するとともに,それらの層序関係が明らかになった.この成果を日本第四紀学会で発表した. 2.宮城県南部,鮮新世の本砂金・竹林カルデラの地質と形成過程 東北地方には多数のカルデラ火山が存在するが,本砂金・竹林カルデラはそのうちの一つである.これらのカルデラ火山は,太平洋岸に分布する海成鮮新統に挟在するテフラ層の給源として重要である.カルデラを埋積する火砕流堆積物の層序・層相・岩石学的性質を明らかにし,その噴出年代と形成過程について検討した.これらの成果を論文として地質学雑誌に投稿中である. 3.テフラデータベースの充実と中〜大規模爆発的火山噴火の長期将来予測に向けて テフラデータベースの構築に向けて,他のテフラ研究者との情報交換をおこなった.また近畿地方の120万年間にわたるテフラ層序から,テフラ層の年代と噴出体積を見積もり,九州のカルデラ形成噴火の噴出量累積階段図を作成した.九州のカルデラ形成噴火は海水準が大きく変動する時期に対応している可能性があること,山陰の第四紀火山の中規模爆発的噴火は高海水準期に多く噴出している可能性が考えられることが分かった.これらの成果の概要を日本地質学会で発表した.
|