研究概要 |
白亜紀における植物の進化,特に被子植物の進化・拡大とそれによる陸域生態系の変化を復元することを目的として,北海道などの白亜系堆積岩や大型植物化石を対象に古生物学・生物地球化学研究を進めた.特に,本研究は、古代植物に由来する化石ポリマーに着目して,それから古生態・古環境記録を解読することが特徴であり,研究の進め方も,(1)北海道白亜系の陸域古環境変動の復元と,(2)古代植物の化石ポリマー分析方法の開発等の基礎研究,の2つのアプローチから行なっている. 平成16年度に行なった研究およびその成果は以下のとおりである. 1.北海道大夕張地域に分布する蝦夷累層群の,特に日陰ノ沢層(Albian〜Cenomanian相当)の地質調査と露頭の地層からの堆積岩および大型植物化石を採集した. 2.本科研費で設置された蛍光顕微解析装置で,堆積岩中から分離した植物化石に由来する有機物破片を蛍光特性などから分類した.また,植物由来有機物破片を木質部と草本質部などにさらに遠心分離する方法を検討した. 3.化石ポリマーの基礎研究として,中新世の植物化石など(おもに球果や種子化石)も用いて,おもに化石ポリマー中にエステル結合している化学部位(分子ユニット)をアルカリ加水分解して検出・同定する分析方法を検討した.植物体を構成するスベリンポリマーやリグニンポリマーに由来する分子ユニットが数種類同定され,それらが化石中でも比較的よく保存されていて,さらに化学分類などに適用できることがわかった.また,テルペノイドのようなバイオマーカーも同定され,このような化石ポリマー結合態バイオマーカーが残されていて,古生物・古環境復元に使えることが判明した. 4.植物化石ポリマー中のエステル結合態分子の炭素同位体比分析を行い,それが過去の古気候学的な要因で変化している可能性を見出した.
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