研究概要 |
本研究の主目的は,エゾバイ科モオリバイ類(Penion属,Kelletia属,Buccinulum属,Cominella属などを含む)の移動と分化のタイミングを明らかにすることにある.まず,エゾバイ科の属間関係に主眼をおいた現有の分子系統学的データに補足を行い,Molluscan Research誌に投稿した.(Vol.25に掲載予定).本論文では,Kelletia属とPenion属(前者は北半球,後者は南半球固有属)の分化,北半球におけるKelletia属の種分化のタイミング(日本と北米に一種づつ分布),モオリバイ類の単系統性,およびその起源について論じたが,分析している遺伝子の解像力や,取り扱っている種数が少ないため,モオリバイ類の単系統性と起源については,決定的な結論にはいたらなかった,特にCominella属の代表として加えているCominella adspersaは他のモオリバイ類と比べ,進化速度に違いがあり,問題がある. 2005年2月には,ニュージーランドにてサンプルの野外採集,博物館所蔵標本から組織の採取を行い,主にBuccinulum属,Cominella属について複数種のサンプルを得ることができた.これによって属間関係の解析の信頼性の向上とともに,南半球で適応放散を遂げた両属内の種分化過程も明らかにできるものと期待される.
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