昨年度の装置導入および研究の結果、岩石試料を精密に逐次研削することが可能となった。そこで本年度は四国中央部三波川変成帯から採取した泥質変成岩を試料として研削作業を進めた。一回研削する毎に鏡面研磨を施し、EPMAによって研磨面に露出しているザクロ石粒子の元素マッピングおよび定量分析を行った。二次元の元素マッピングの画像データについては、定量分析から求めた適切なしきい値を設定して二値化し、ピクセル数計測によって、ザクロ石中の特定の化学組成範囲を持つ部分の面積を出すことができた。ザクロ石の外形を球と仮定し、二次元画像で得られる面積は新たに成長したザクロ石の外殻の断面積であると考えて、面積を体積に換算した。これが、ザクロ石中で特定の化学組成範囲を持つ部分の成長量となる。一方、ザクロ石の化学組成は、ギブス法計算によって温度・圧力条件と対応づけることが可能である。したがって、これらのデータを合わせて、ザクロ石の成長量を温度圧力条件に対してプロットすることができた。プロットした結果、ザクロ石は低温時には成長量が少なく、高温時には成長量が多くなる傾向が見られた。この結果は前進モデルで予測されるザクロ石成長挙動と調和的ではあるが、計算結果では高温時により極端な成長量増大が見られる。これが、包有物が多数含まれる二次元断面での計測による誤差の影響かどうかは、三次元の成長量復元の結果によって判断されると考えられる。蓄積中のデータを用いて、次年度に三次元的な成長量測定を試みる予定である。
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