本年度は、前年度に引き続き以下のような二点に関する研究を行った。一つは、ユークライト隕石の角礫岩および変成岩の形成過程に関するもの、もう一つは月の裏側起源とされる隕石に関する鉱物学的研究である。 ユークライト母天体(小惑星ベスタ)の地殻は、その形成直後から、度重なる隕石の衝突により、大規模に破砕されたことが知られている。それと同時に、地殻に多量の外来物質が付加された。しかし、これまで、この外来物質(隕石)の起源に関する詳しい研究はなされてなかった。本研究では、Dhofar007と数個のポリミクトユークライトに関して、その鉱物や岩石組織と全岩組成から外来物質の起源を明らかにしようとした。鉱物学的に推定された熱史と全岩組成のデーターから、数個のユークライトは、メソシデライトと呼ばれる石鉄隕石に成因的に関連している可能性を示した。これらの研究結果は、国際誌(Yamaguchi et al. 2006)や国際隕石学会において公表された。 月高地起源の隕石、Yamato-86032およびDhofar489の岩石学的研究から、月地殻の発達過程を明らかにしようとしている。これらの月隕石は、鉄やトリウムの含有量が極めて低いことから月裏側高地が起源であるとされる。これらの隕石に含まれる斜長岩岩石片は、表側起源の岩石と異なる結晶分化過程を経て形成されたと考えられる。これは、月の表側と裏側の地殻は、異なった形成過程を経た可能性が高いことを示す。この月隕石に関する研究結果は、現在、国際誌に投稿中である。
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