研究概要 |
八丈島地域におけるマグマの長距離移動を検証する目的で、野外調査および岩石試料の分析を実施した。昨年度までの研究により、1)八丈島から北西方向に伸びる海底火山列は、八丈西山火山とほぼ同時期の火山活動で形成され、極めて最近活動していたこと、2)北西火山列内でのマグマの化学組成変化は、同一の初生マグマの結晶分化作用で説明できる可能性が高いこと、3)八丈西山火山と北西火山列の初生マグマは異なる、すなわち西山火山の浅所マグマだまりからの長距離マグマ移動では、北西火山列のマグマを説明できない可能性がある、こと等が明らかになった。今年度、2)および3)の点について検証するために、八丈西山火山および北西火山列さらには隣接する八丈東山火山の試料についてSr,Nd,Pbの各元素の高精度同位体組成分析を行った。その結果、西山火山と北西火山列のマグマ起源物質は、従来法より高精度な分析を行ってもその差異は認められず、同様(同一)の起源物質からマグマが生成されたことが明らかになった。これは長距離地殻深部でのマグマ移動の可能性を示唆するものである。この結果を踏まえ、初生マグマの同一性を詳細に検討する目的で溶岩の石基部分の微量元素組成をレーザアブレージョン法により測定した。その結果、昨年度全岩試料についての分析で認められた一部の微量元素組成上の差異が、斑晶鉱物の存在量比の差によるものであることが明らかになった。これにより本研究で初の物質面からの検証を目指したマグマの長距離移動が西山-北西火山列間で起きた可能性が極めて高くなったといえる。現在最終的に決着をつけるべく斑晶鉱物の微量元素組成分析を準備中である(5月実施予定)。また同位体組成分析から、八丈東山と西山のマグマ起源物質は異なるものの漸移するように見え、2つのマグマシステム間でマグマ移動等によるインタラクションの可能性を示唆する結果が得られた。
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