長崎変成岩類中の蛇紋岩メランジに産する変成岩塊の岩石学的特徴、形成条件、放射年代を明らかにすることを目的とし、野外調査および室内研究を行った。 野外調査は、九州西部西彼杵半島においてのべ10日間(私費による調査を除く)実施した。踏査によるルートマップ作成を行い、当該地域の地質図を作成して蛇紋岩メランジの分布を明らかにした。また、変成岩塊の多様性および産状を観察し、ヒスイ輝石岩(新産地)、オンファス輝石岩、クリノゾイサイト-白雲母岩、曹長岩、ザクロ石-角閃石岩、メタベイサイトなどの変成岩塊試料を採集した。 室内研究は、採集した変成岩塊試料を薄片に加工し、偏光顕微鏡や走査電子顕微鏡を用いて鉱物共生および岩石組織の観察を行った。また、EPMAを用いて鉱物の化学組成を測定した。とくにヒスイ輝石岩については重点的に研究を行い、その結果、核部に石英包有物を含むヒスイ輝石を見出した。石英包有物がヒスイ輝石(Jd_<90>-Jd_<100>)と接することやその量比から、ヒスイ輝石の核部はヒスイ輝石+石英の安定温度圧力条件において曹長石の等化学的分解により形成されたと考えられる。さらに、鉱物共生からヒスイ輝石岩の後退変成作用のP-Tパスを推定した。これらの成果は、日本岩石鉱物鉱床学会にて口頭発表され、論文として投稿中である。 研究の過程で、ヒスイ輝石岩中に雲母類およびモナズ石が認められた。現在、これらの鉱物を用いた放射年代測定の準備を進めている。また、ヒスイ輝石雁以外の変成岩塊について岩石学的研究を進めている。
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